島村楽器限定販売のカシオトーン「CT-S300」インプレッション

買ったもの

カシオのCS-S300を購入して1カ月ほど経ちました。最初は「?」な感想でしたが、いまはかなり気に入っています。

購入の目的・経緯

仕事の机のかたわらに置いておき、気が向いたら練習中の曲をちょこっと弾くために購入。これまでそういうニーズは、ミニ鍵盤のReface CPやSHS-300が担ってくれていました。しかしどちらも37鍵ということで、曲によっては鍵盤の数が足らず、無理やりなボイシングで乗り切ることに(その工夫も楽しいのですが)。加えてミニ鍵盤なので弾きづらいフレーズもあり、それなりにストレスを感じていました。

ということで、以下の条件でキーボードを探します。

  • フルサイズ61鍵
  • スピーカー内蔵
  • 電池駆動
  • 軽量
  • 奥行きが短い(仕事用の机に置くため)
  • できるだけ安い

条件に合ったのがカシオ「CT-S200」でした。昔懐かしい「カシオトーン」を愛称に持つエントリーキーボードです。

重量3.3kgで奥行きも25.6cmと短め。何より本体に持ち手というか取っ手というか、握るところがあるのがうれしい。これなら椅子に座ったまま持ち上げて、気軽に机の上に置けそう。

ただしこの「CT-S200」、タッチレスポンスに対応していないことが気になりました。いま思えば絶対必要というほどではなかったのですが、そのときはかなり重要に思えたのです。タッチレスポンスが。

他に妥当な製品はないかと調べているうちに、上位機種とみられる「CT-S300」を発見。こちらはちゃんと鍵盤がタッチレスポンスになっている。

しかも各ボタンの表記が日本語ではなく英語だったり、HOMEボタンが目立つオレンジではなく落ち着いた紫色だったりと、なにげに見た目がかっこいい。

売っているショップをほぼ見かけない理由は、本来は海外モデルで、国内だと島村楽器の専売という位置づけだからのようです。

「CT-S200」より6,000円ほど高価になってしまいましたが、あまり悩むことなく「まあいいか」と購入に至ったのでした。

外観

白鍵以外はほぼ黒一色という、エントリーモデルにしてはなかなか渋い見た目です。ひたすら日本語を廃したボタン表記も良いですね。ちなみにメニューも全部英語ですが、これはCT-S200も同じようです。

ラジカセを思わせるハンドルもすばらしい。片手でひょい、というわけにはいきませんが、座ったまま気軽に持ち上げて机に載せられるのは快適です。デザイン的にもとってつけたような安っぽさはなく、全体にマッチしていると思います。

鍵盤

いわゆるボックスタイプの鍵盤です。もちろん樹脂製。一見するとピアノと同じような鍵盤のように見えますが、ふかふかで軽く、表面はさらさら。本格的な鍵盤とはとてもいえませんな。使い始めたとき、ちょっと公開したのがこの点です。

こう書くとダメな感じがしますが、しばらく弾いているとなぜか心地良くなってきます。もちろん本物のピアノやハンマーアクションの電子ピアノとは比べるべくもありませんが、これはこれで私的にはありに感じています。ピアノではなく、エレクトーン出身だからでしょうか。鍵盤がどうとかいう以前の練度なので問題ありません。

むしろハンマーアクションのPX-S1100よりも、鍵盤の奥側が弾きやすい気がします。タッチノイズも少々ありますが、早弾きしない(できない)自分としては「まあこんなものかな」と納得。さらさらした表面のみ、弾き始めに滑りがちなのが気になりますが、これも私の弾き方が悪いのかな。

リズム・自動伴奏

いわゆる自動伴奏機能が用意されていて、こいつがなかなか楽しいです。いま家にあるキーボードにこうした機能がなかったこともあり、現在進行形でハマっています。

コードの認識モードを「フルレンジ」にしておけば、7♭5やaug7、sus4、add9、m69まで対応します。自分には縁のない世界。

ドラムセットだけを鳴らすこともでき、メトロノーム代わりに使うのも楽しいです。私にとってはこちらがメインの使い方でしょうか。ちなみに使いやすい電子メトロノーム機能も内蔵しています。

正直いうと、もう少しおしゃれでかっこよいリズムや自動伴奏が欲しかったところですが、まあこれがカシオトーンらしさということで(偏見)。

あと不思議なのが77種類あるリズム・自動伴奏のうち、14種類がマイナーなイメージのインド系なこと。ラテンも11種類と充実しているし、どうもこの頃のCT-Sシリーズは、新興国での販売に力を入れていたようですね。YouTubeで「CT-S200」や「CS-S300」を検索すると、インド、ラテンアメリカ、インドネシア、ロシアといった地域・国からの発信が目立ちます。ちょっと新鮮。

操作性

筐体の奥行きが短いためか、操作できるボタン類が極めて少なくなっているのも特徴。ヤマハのポータトーンと比べるとその差は歴然です。個人的には好きなデザインですが、新興国だとヤマハより押し出しが弱かったのではないかな。

ボタンが少ない本機ですが、操作性は極めて快適です。

特に音色の選択にUIの基本思想が現れています。階層をなるべく作らず、並列に配置された音色を選ぶ→迷子になったらHOMEボタンを押して戻る、というシンプルなもの。大量の項目の移動には、極めて操作性の良いメインダイヤルがあてられています。順番をある程度覚えてしまえば、くるくるとダイヤルを回して目的の音色にたどり着けます。

このUI、最初は「どれだけダイヤルを回させるつもりか」と憤ったものですが、前述の通りダイヤルの操作性が良く、メニュー項目の切替がすばやく切り替わります。ライブ演奏で素早く設定を変えるようなキーボードではないので、これで問題ないのでしょう。私は気に入りました。

あとは液晶画面の下にある3ボタンが、場面に応じてアシストしてくれます。初期状態に戻るHOMEボタンだけ色が違うのもわかりやすい。

ボリュームの調整がノブではなく、ボタン制御なのは残念。ボタン制御でも悪くはないのですが、小音量域の変化が大雑把すぎると感じます。壁が薄かったりすると、隣室に気を遣いがちかもしれません。

機能

目玉?のタッチレスポンスですが、最大で3段階のベロシティが設定されているようです。ベロシティによってサンプリング音が変わる音色もあります。音量を小さくしていると反応がセンシティブ過ぎると感じる音色もあり、その場合はFANCTIONメニューで「Normal」から「Light」または「Off」へと切り替えることで対処できます。

オクターブシフトをしたい場合は、FANCTIONメニューからトランスポーズを選び、-12や+12に設定。1発でシフトできる専用ボタンがありませんが、61鍵あるのでそれほど困ることはないでしょう。-12や+12にするにしても、ダイヤルで目一杯回すだけなので簡単です。

ピッチベンドホイール

CT-200との差別化として、ピッチベンドホイールを備えています。変化量も0〜12の範囲で設定可能です。

拡張性

背面の端子類は、左からAUDIO IN、PHONES/OUTPU、DC IN、USB、PEDAL。

面白いのは1番左のAUDIO IN。おそらくスマーフォン内の音楽ライブラリを本機のスピーカーで再生することを想定しているのでしょう。本機の音色とミックスして出力できます。ここまでやるならBluetoothでスマートフォンと接続できると良かったのですが、まあコスト優先の製品ですしやむなし。

右端にはPEDAL端子もあります。サステインの他、ソステヌート、ソフトへの切り替えにも対応する本格派です。このキーボードにペダルを接続する人はそう多くないと思いますが(もちろん製品に付属していません)、ペダルが使える意義は大きいのではないでしょうか。

ちなみに本体の「SUSTAIN」ボタンを押すことで、ペダルなしで疑似的なサステインをかける機能もあります。音が伸びる時間を制御できないので厳密な表現には適していないのでしょうが、ペダルなしでそれっぽい雰囲気を楽しむには十分でしょう。

USB端子も装備しているので、PCなどのMIDIキーボードにもできます。ただしがMicro USB Type-B(2.0)という、いまとなってはマイナーな形状。家の中を探せばどこかにあると思うのですが、長目のTybe-Bはもう処分しただろうな。

マイセッティング

意外と細かく設定できる本機ですが、電源を切ると多くの設定がクリアされてしまいます。音色やリズム、リバーブ(残響系のエフェクト)もです。

使い始めてすぐの頃はいろいろと変えるのが楽しくて気にならなかったのですが、ある程度使う音色やリズムが固まってくると、これが不満に思えてきました。

解決策はちゃんと用意されていて、マイセットアップボタンから入る機能がそれ。各種設定をマイセットアップとして記録し、必要なときにロードすることで設定類を再現できる仕組みです。

ただし、記録できるマイセットアップは1組だけ。製品の性格上、たくさん登録して切り替えて演奏するような使い方は思い浮かばないのですが、音色毎に3パターンくらいを切り替えられると良かったかなと。

ちなみに、電源ONでマイセットアップを自動的にロードさせることもできます。こうしておくと、常に同じ設定で起動するというわけ。1つしかマイセットアップがないのはこのためでしょうか。

まとめ

起動も速く、電源を押して1秒程度で音を鳴らせます。この気軽さはいままでにない感覚で、例えばPX-S1100は6秒、Reface CPは5秒程度かかることを考えると、ちょこっと弾くにはうってつけのキーボードだと感じています。

電池もよく持ちます。私の場合、付属のACアダプターを使わず3週間は持ちました。6本組という中途半端な必要本数ですが、単3形のニッケル水素充電池で動くのはありがたいことです。

というわけで、最初の印象より楽しめているCT-S300。ただし、そもそも安い製品ということで、すべてを褒め称えて終了、とはいかないのも事実。次回は少々苦言を呈してから、総評を述べたいと思います。

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